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2013年7月13日 (土)

「small is beautiful」

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第一章

今から16年前。自分がどこへ進んでいいのか、

自分がどこへ進んで行きたいのか悩んでいた。

考えても、考えても、何も見つからない。

そんな時、あるエッセイを読んだ。

「コンフォルト」という建築デザイン誌に描かれたエッセイ。

そのエッセイを読んでから二日後。

吸い寄せられるように、その舞台へ流れていった。

地図を見ないで、エッセイの文字からヒントを見つけて。

「池」、「雑木山」、「民芸」、「益子」・・・・。

そして、やっとの思いで探し出した場所。

益子の雑木山の麓にある「STARNET」。

興奮する自分を抑えた。ここが私の目指す場所。

車を降り、いざ店内に入ろうとした瞬間、

目にしたものが「本日臨時休業」の文字。

頭が真っ白になる。

これが私の人生なのか?と落ち込んでいると、

ひとりで作業している男性が近寄ってきた。

この街には似合わないカッコイイ人が。

それが、後に私の師となる馬場浩史氏だった。

この日は、たまたまイベントの撤収作業をしており、

たまたま私の前にやってきて、たまたま私と目があった。

今でも忘れない。緊張しすぎて、失神寸前だった。

「沼津から来ました。5分だけでいいんでお話を・・」

そしてこの日から、「益子通い」が始まった。

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第二章

益子に通いだして数ヶ月の事。

馬場さんに見て頂こうと思い、

思いきって私の仕事の作品集を広げた。

一切のコメントもなく、静かに本が閉じた。

これが「答え」である。

ある節分の夜。馬場さんの仕事部屋に呼ばれた。

綺麗な白磁の器にお酒が。「どうぞ」と。恐縮した。

「自分の事をしっかりとやり直してみたら」と。

ここでいう「ケンブリッジの森」の事である。

「砂糖ひとつこだわってごらん」。

このひと言で目が覚めた。

自分の店をきっちりしないで、他の店なんか創れない。

早速沼津に戻り、やり直し作業に入った。

何かを変えると、あっちもこっちも変えなければならない。

資金があるわけではないから、古材や鉄を探してきては、

大工さんに頼んで創ってもらった。

カフェの内容も同じである。

調味料や野菜などを探し歩いた。

そして、未完成ながらも新しいカフェが誕生した。

その後も懲りずに、作品のファイルを持ち益子を訪ねた。

ちゃんとコメント頂くようになったのは、

通い始めてから数年後の事だった。

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第三章

「STARNET」も16年で大きく変った。

山の上に「ZONE」ができ、その隣に「RECODE」が誕生した。

そこで多くのアーティストが生まれ、旅立った。

数年前の夏、私は「ZONE」にいた。

馬場さんのデザインプロジェクトのサポート。

夢のような時間だった。

早朝から、パソコンなしの仕事が夜まで続いた。

「愛情と心を込めて描きなさい」と。

手書きの平面図とパースの資料制作。

仕事の後の「まつや」のうどんは格別だった。

馬場さんの奥様に創って頂いた現場での弁当。

星さんには、地元の野菜いっぱいの夜食を。

すべての仕事に愛情が宿っていた。

この夢のような経験が、私の原点である。

デザインの事だけではなく、

生きていくために、本当に必要な事を学んだ。

そして、多く方と益子で出会えた。

照明作家の川村忠晴さんや家具作家の高山英樹さん。

陶芸家の石川若彦さんや造形作家のキンタさんや。

すべて、馬場さんのご紹介から生まれたものである。

今の「ケンブリッジの森」があるのは、

「STARNET」と「益子の人々」のおかげである。

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自分が道で迷うといつも益子の空を見る。

馬場さんはなんて言うのか。正解か不正解なのか。

隣にいる妻は言う。「益子に行ってきなさい」って。

もう100回以上は益子に通っているだろう。

先日、私の誕生日の日、益子にいた。

静かに馬場さんとお茶をする。

風を感じ、空気を感じ。穏やかな時間が流れた。

難しい話はしなかった。

馬場さんの穏やかな横顔を見ながら思った。

この人についてきて良かったなと。

そして、私にとってものすごい大事な人である。

「small is beautiful」

馬場さんから頂いた大切な言葉。

文/藤原慎一郎 (REWRITE)

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